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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)2416号 判決 1952年9月12日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

被告人平野芳雄の上告趣意について。

所論は事実誤認の主張であって刑訴四〇五条所定の上告理由に該当しない。

弁護人国原賢徳の上告趣意第一点について。

所論は審理不尽、理由不備及び事実誤認の主張であって刑訴四〇五条所定の上告理由に該当しない。

同第二点について。

連続犯の規定は昭和二二年法律第一二四号で削除されたのである。従って右規定廃止後は数個の窃盗行為が数日の期間を経て行われたときは、たとえその被害者が同一人であるにしてもこれを併合罪として処断すべきものであり、併合罪の関係にある一部の罪について判決がなされても、その判決の既判力は他の部分の罪には及ばないのである。本件において第一審判決認定の第一の罪は被告人は昭和二三年一二月三〇日頃日栄みや子方から同人所有に係る衣類合計一六点を窃取したというのであり、被告人が昭和二四年二月二五日名古屋地方裁判所で受けた所論確定判決の罪は第一、昭和二三年一二月一日頃日栄みや子方で同人所有の衣類十数点を窃取し、第二、同二四年一月七日頃前同所に於て同人所有の衣類五、六点を窃取し、第三、同年同月二七日窃盗の目的で前記日栄みや子方風呂場より同屋内に侵入し衣類等を物色したるも被害者に「泥棒、泥棒」と騒がれて其の目的を遂げなかった事実であって併合罪として処断せられているのである。されば右確定判決を経た各犯行と原判決の是認した第一審判決判示第一の犯行とは同一の犯罪ではなく別個の犯罪であり併合罪として処断さるべきものであるから本件第一の犯行を審理裁判したことは前記確定判決に判示された各犯行につき再び審理裁判をしたものということはできない。従って所論憲法三九条違反の主張はその前提において既にその理由がないものである。

なお記録を精査しても本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって刑訴四〇八条、一八一条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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